初版: ’10/9/6
現在の宇宙はビッグバンによって成立したと考えられている。
ビッグクランチ(Big Crunch)とは、宇宙の終わりに関する仮説(理論)の一つで、 宇宙が膨張している状態から収縮へと転じて、宇宙内にある全ての空間、物質がある一点に収束して消滅するという現象のことである。
“閉”符という名も、この収縮するイメージからのものと考えられる。スペルカード中での弾幕は、巨大な灰色弾(使い魔?)が魔理沙を中心に拡散し、 大量の小さい青星弾をばら撒き、炎弾を生じた後に再び魔理沙の元へ収束するという動きを見せる。この動きは、ビッグバンからビッグクランチへの宇宙の膨張と収縮の様子を表しているものと思われる。
ところで、相対性宇宙論においては一般にフリードマンの宇宙モデルなるものを考えるという。
ここで宇宙原理(宇宙は完全に一様で等方的)を仮定した上でアインシュタインの方程式を解くと、 その解には三つの型が存在するという。
一つは”閉じた宇宙”と呼ばれるもので、有限の広がりと大きさを持つ。宇宙の寿命もまた有限で、膨張はいずれ収縮に転じて上記のビッグクランチを起こすと考えられている。
一方、”開いた宇宙”と呼ばれるモデルでは、宇宙は無限の広がりと大きさを持つ。こちらは宇宙は永遠に膨張し続けるので、閉じた宇宙のような寿命は存在しないといわれる(ただし収縮しないからといって今のような宇宙の姿が永遠に続くわけではなく、 宇宙の密度が低くなりやがては熱死と呼ばれる状態に陥ると考えられているようだ)。
もう一つの型は、上記の二つの型の中間に位置する型で、”平坦な宇宙”と呼ばれる。この平坦な宇宙も膨張を続けるが、開いた宇宙とは異なりその膨張の速度は緩やかで、 時間の経過と共に膨張の速度も衰えていく(この三つの型についてよく使われる例えの図としては、三次元平面的に、 閉じた宇宙を球体あるいはドーム状、開いた宇宙を馬の鞍の形(双曲放物線)、 平坦な宇宙を平面として描かれる。ただし、対象にしているのは四次元なのであくまで類推としての形)。
なお、現在の宇宙はどのモデルに属するのかは未だに分かっていない。
スペルカードのオープンユニバース(Open Universe)とは、今述べた宇宙モデルのうち 二番目の開いた宇宙のことであると思われる。スペルカード中の弾幕は、巨大な灰色弾も小さい青星弾も次々に画面外へと拡散していくが、 内側へ戻ってくるものはない。この様子が、永遠に膨張を続ける宇宙の姿を表しているのだと思われる。
なお、この二つのスペルカードでは巨大な灰色弾と小さい青星弾が共通しているが、 これは二つとも同じ分野からモチーフを得ているからであろうか。
また、開いた宇宙では収縮は起こらない。このために、閉符「ビッグクランチ」を先に行使したのであろうか。もしそうだとするならば、妙に律儀ではある。
― 出典 ―
- 『妖精大戦争 ~ 東方三月精』 ゲーム:ZUN 絵:比良坂 真琴 2010 (敬称略)
― 参考文献 ―
- 『輪廻する宇宙 ―ニーチェからホーキングまで―』 Paul Halpern著 江里口 良治/水島 信子訳 丸善株式会社 H.9
- 『図解入門 よくわかる最新宇宙論の基本と仕組み』 竹内 薫著 株式会社秀田システム 2005
- 『徹底図解・アインシュタインからホーキングまで もっとわかる宇宙論』 和田 純夫著 株式会社日本実業出版社 1991
- 『FRONTIER SCIENCE SERIES 時間の逆流する世界 ―時間・空間と宇宙の秘密―』 松田 卓谷/二間瀬 敏夫著 丸善株式会社 S.62
- 『天文の辞典』 堀 源一郎/日江井 栄二郎/若生 康二朗/編 株式会社朝倉書店1989