初版: ’08 8/8
なお、大半のスペルカードに絡んでくる”非想非非想天(ひそうひひそうてん)”については別項で後述する。
- 坤儀の剣
- 坤儀(こんぎ)とは大地のこと
- 天罰の石柱
- 意味はそのままか。天が下す罰である石の柱。ということで石柱(要石)が天から降り注ぐ、と。
- 六震-相-
- 未詳。”陸”が六の大字であることから、六は陸に通じ、六震とは陸震のことではないか、など考えたが不明。
- 守りの要
- 要石は地震を起こすナマズを押さえつけているといわれる。
それ故イメージとしては守りということになるからか。
- 要石は地震を起こすナマズを押さえつけているといわれる。
- 天地プレス
- 天地、つまり上下から敵を要石で押し潰す(press)、ということであろう。
- 地符「不譲土壌の剣」
- “不譲土壌”とは『史記』などに見える言葉。
“泰山不譲土壌(たいざんどじょうをゆずらず)”という定型でも用いられる。その意味するところは、「泰山は小さな土の塊でも嫌がることなく受け入れたからこそ立派な山になった。」ということで、立派な人物になる為には小さなものも取り入れるべきである、という考えを表す。
なお、泰山とは中国の名山の一つで、山東省泰安県にあるという。スペルカードの演出としては、泰山の如き巨大な岩塊を撃ち出すということか。或いは、小さな気質すらも集束して大きな岩塊を出現させる力とするところに趣を置いているのか。
- “不譲土壌”とは『史記』などに見える言葉。
- 天符「天道是非の剣」
- “天道”とは、天の意思や自然の法則を意味する。
“是非”は良し悪し、道理に適っているかどうかという意味を示す。つまり、天道是非とは自然法則が道理に適っているか…地震が相応のものなのか、ということか。
或いは、天を天人とすれば、天人である天子の意思が相応のものであるかどうか、ということを表しているのか。
- “天道”とは、天の意思や自然の法則を意味する。
- 地震「先憂後楽の剣」
- “先憂後楽”とは、先に深く考えを巡らせておけば、後に楽ができるということ。
茫仲淹の『岳陽楼記』では「憂うべきことは誰よりも真っ先に心配し、楽しみは民衆全てに行き渡ってから楽しむ」という立派な為政者の心構えを表す戒めとして用いられた。
スペルカードの演出としては、まだダメージを被らない予兆の地震(数度に渡る画面の揺れ)のうちから空中に退避して(先憂)いればいざ本震が来た時にダメージを被らなくて済む(後楽)、ということであろうか。
- “先憂後楽”とは、先に深く考えを巡らせておけば、後に楽ができるということ。
- 気符「天啓気象の剣」
- 天啓とは、天の啓示。気象は大気中に発生する現象のこと。
故に、天が気象を知らしめす、ということになる。また、”気象”は”気性”のことも意味することがあるようだ。
今作では、その人の気質によって天候が変化したので気象と気性は互いに関係があるものといえる。その為、”気象”は気性の意味も兼ねたダブルミーニングになっていると考えられる。
- 天啓とは、天の啓示。気象は大気中に発生する現象のこと。
- 要石「天地開闢プレス」
- “天地開闢”とは、天と地が互いに分かれること、即ち世界の始まりを表す。
天地が離れると共に要石も抜けて宙に浮く、その宙に浮いた要石を使って敵を押し潰す、ということか。
- “天地開闢”とは、天と地が互いに分かれること、即ち世界の始まりを表す。
- 気符「無念無想の境地」
- “無念無想”は一切の雑念から離れた状態のこと。
それ故、ダメージを喰らっても動じない(のけぞらない)のだろう。
- “無念無想”は一切の雑念から離れた状態のこと。
さて、本題である非想非非想天について。
なお、関連するスキルカードは、「非想の威光」、「非想の剣」、「緋想の剣」。
スペルカードは、非想「非想非非想の剣」、「全人類の緋想天」になる。
- 非想非非想天
- 非想、非想天、非想非非想処などとも称される。
その意味するところはおおよそ、- 非想: 意識する(想)ことがない(非)
- 非非想: 意識しない(非想)ことがない(非)
- ということで、意識でも無意識でも無い、極めて僅かな心の思念があるだけのほぼ無想の状態を指す。
位置付けとしては、人間が生死を繰り返す三つの世界(三界…欲界・色界(しきかい)・無色界)のうち、無色界に属する。
なお、欲界とは本能的欲望に支配された世界で、この中に六道があるという。
色界は欲界と無色界の中間に位置し、物欲から離れた世界であるという。そして、無色界とは色(物質)を超越した精神のみの世界であるという。
また、無色界の悟り(禅定)には四種(四無色定)あり、その各々が”空無辺処”・”識無辺処”・”無所有処”、そして”非想非非想処”、即ち”非想非非想天”である。非想非非想天が最高位に位置するという。
なお、存在(有)の頂点に存在する天なので、非想非非想天は”有頂天”ともいう。
余談ではあるが、”六道”といえば魂魄 妖夢が妖々夢で行使していた種々のスペルカードに冠していた”餓鬼界、地獄、畜趣界、修羅界、人界、天界”のそれである。
また、色(しき)については文花帖にて八雲 紫が行使したスペルカード境符「色と空の境界」にもその概念は登場していた。
また、非想非非想天はサンスクリット語では”naivasamjnanasamjnayatana”というような綴りになるそうだが、頭に”nai”とあるのは少々気に掛かる。
まさか、比那名居は非想非非想天と”名居”をかけたダブルミーニングだったり…はしないと思うが、一応記しておく。
- 非想、非想天、非想非非想処などとも称される。
最後に。
仏教は宗派によって見解が異なったり(例えば六道の名称や位置付けなど)するので、上は私が調べた限りではあるが、書や説によっては異なると思われるので注意して頂きたい。
― 出典 ―
- 『東方緋想天 ~ Scarlet Weather Rhapsody.』 上海アリス幻樂団/黄昏フロンティア 2008
― 参考文献 ―
- 『学研 現代新国語辞典 改訂新版』 金田一 春彦著 株式会社学習研究社 1997
- 『古語林』 林 巨樹/安藤 千鶴子編 株式会社大修館 1997
- 『全訳 漢辞林』 戸川 芳郎監修 佐藤 進・濱口 富士雄編 株式会社三省堂 2002
- 『新選 漢和辞典 新版』 小林 信明編 小学館
- 『例文 仏教語大辞典』 石田 瑞磨著 小学館 1997
- 『仏教用語事典』 須藤 隆仙著 株式会社新人物往来社 1993
- 『仏教民俗辞典』 仏教民俗学会編著 株式会社新人物往来社 1993
- 『岩波 仏教辞典 第二版』 中本 元/福永 光司ら編 株式会社岩波書店 2002