「ホットジュピター落下モデル」について雑考

初版: ’09 8/30

今回着目するのは、ストーリーモードで霊烏路 空が使用するスペルカード、「ホットジュピター落下モデル」である。

「ホットジュピター落下モデル」とは、”ホット・ジュピター”なる木星型惑星(巨大ガス惑星)の形成過程を示す仮説の一つとされる。

ここで登場する”ホット・ジュピター”とは、恒星の至近距離(1天文単位(太陽と地球の間の距離)の1/10以下の距離)を高速・短周期で公転する巨大ガス惑星のことだという。その名称については、恒星の至近距離を公転するがゆえに恒星からの膨大な光熱により、惑星の表面が非常な高温になっていると考えられていることから”Hot Jupiter(熱い木星)”、また、太陽系の惑星からは想像できないような特徴の惑星であったことから
“ホット・ニュース”の意味も掛けられた掛け言葉としてそう呼ばれるのだそうである。

なお、ホット・ジュピターの他の特徴としては、惑星の主成分が水素やヘリウムではないかと考えられていることや、恒星からの重力の影響が大きいために、ホット・ジュピターは恒星に対して常に同じ面を向けていると考えられていることなどが挙げられる。

このような惑星は、2003年現在で発見されている系外惑星百個強のうち十15~20個ほどがそれであるという。

さて、このホット・ジュピターがどのような過程を経て形成されていったのかを説明するために提案されたモデルは数個ある。そのうちの一つが、「惑星落下モデル」だという。その基本的な考えは、まずガス惑星が、太陽系のようにその惑星系の比較的外側で形成される。その後、惑星落下現象によって徐々に内側(恒星のある方向)に惑星が移動していった、というもののようである。

なお、この過程を説明するにも幾つかの説がある。それは、円盤にあるガスの圧力によって惑星が恒星の方向へと押しやられるというもの。あるいは、惑星と円盤の重力の相互作用、またガスが惑星へと流入していくことも相俟って円盤のガスの間に惑星の軌道上に溝ができる。その溝に惑星は閉じ込められてしまうが、ガスが恒星に引き寄せられていくことによって、溝ごと惑星も恒星のある方向に移動させられた、という考えが示されているようである(なお、こうした仮説でも恒星の至近距離で惑星が留まって公転し続けるようなブレーキとなる力が必要であり、その力についても幾つか仮説が提唱されているらしい)。

何にせよ、恒星の至近距離を高速かつ短周期で公転するホット・ジュピターがどのように形成されていったかを示す仮設の一つが惑星落下モデルであり、その名称と理論がスペルカード「ホットジュピター落下モデル」のモチーフになっていると考えられる。

では、次にその弾幕について見てみたい。

(太陽の化身である八咫烏を飲み込んだことから)空を太陽、ひいては系の中心となる恒星と見立てると、このスペルカード中で空の周りを旋回する光の球は恒星の至近距離を公転するホット・ジュピターに見立てることができる。

一方、劇中で空がいる場所は核融合炉炉心部である。その背景から、画面下部が炉心の中心であると考えられるが、(恒星は核融合反応によってその膨大な光熱を生じていことから)今度は核融合炉の炉心部を恒星の方向としてみる。すると、宙(恒星からある程度離れた場所)にいる空から球が発生、膨張する様は惑星の形成を、それが画面下方向に落下していく様は、形成された惑星が恒星の方向へと引き寄せられていく、というまさに惑星落下モデルの動きを連想することができるのではないだろうか。

このような点から、スペルカード中の弾幕の動きもスペルカードの名に即したものになっていると考えられそうである。

最後に余談。今作『東方非想天則』は『東方緋想天』の番外編的な位置付けとされるが、主体から外れるということで、今作において太陽系外の惑星であるホット・ジュピターの話を持ち出したのではないか、と考えるのは過ぎた考えであろうか。

― 出典 ―

  • 東方非想天則 超弩級ギニョルの謎を追え』 上海アリス幻樂団/黄昏フロンティア 2009

― 参考文献 ―

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