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animism(アニミズム):
端的にいえば、動植物などのような自然物、或いは自然現象まで自然界のあらゆるものには霊魂が宿るという考え、思想。また、そうした考えの上の信仰を指す。
一八一七年、E.B.タイラー(人類学者/英)が宗教の起源説を説く為に提唱した概念。
その名は、ラテン語の “anima”(霊魂/このうち先頭の an- はギリシア語の “anemos(風)” から来ているとするもある)から名付けられた造語である。
その後、精霊信仰一般を指す語として普及することになる。
※なお、『ジーニアス英和辞典 第三版』には “animism” の項について「アニミズム、霊魂信仰、精霊崇拝」と簡潔に説明されていた。
次にこの語の変遷を辿るならば、この語は不変的に確定した事物を指していたのではなく、時に応じて少しずつその意味するものが変化してきたことが窺える。
まず、先のタイラーはあらゆる宗教の最も小さな定義として”霊的な存在への信仰”を挙げ、この語を用いていたようである。
同人物に拠れば、死や眠り、夢といった一見不思議に思える生理現象を通して人間は霊的存在を想定するようになったという。
この説は原始的な精霊信仰から多神教を経て一神教へと発展したとする進化主義的、西洋中心主義的な発想に基づいたものとして批判を浴びることになった。
その一方で、世界各地の民間信仰、民俗宗教などの基本的な性格を表現する語として普及していったという。
そうした中でアニミズムの語も、いたる所に遍在する生気、生命力といったものの信仰までもをその範疇に含んでいった。また、キリスト教や仏教といった宗教の中に見られる習合形態、その信仰の基本的な部分にもこのアニミズム的な性格が指摘されるに至った。
この語が日本に持ち込まれた際には、祖霊信仰や動物信仰などといった民間信仰にこのアニミズムの性格が指摘されたという。
ところで、過去においてアニミズムの語には少なからず原始的、低級なイメージが付いて回っていた感があったのだが、近年ではそうしたイメージに代わって肯定的な意味で捉えられることも増えたとされる。
このように、その語には時の流れに変じて多少の差異が見られる。しかしながら、『地霊殿』の中ではラスボスが太陽の力を得ており、そのテーマ曲に”太陽信仰”と冠せられている点などから窺うとするならば、それは冒頭で述べた意味、即ち、自然物に対する信仰、といった風の意味合いであったのではないかと推察できる。
Subterranean:
“地下の”、或いは”隠れた、秘密の”という意味の英単語(なお、sub- なる接頭語には下、副、亜などといった意味合いがある)。
これらを踏まえ端的にいうのであれば、”地下の自然物(太陽)信仰”、というところであろうか。
或いは首謀者が部外者には打ち明けずにことを進めていたことから、”隠れた”の意味合いも有すると考えることもできるかもしれない。
ちなみに余談。
『全訳 漢字林』に拠れば、”地霊”とは大地の精霊、大地の霊妙さ(韓詩外電・人)、といった意味合いの語であるらしい。
また、伊吹 萃香のコマンド技、スキルカードにも”地霊”の名を見ることができる。こちらは大地から岩塊(密)や鬼火、人魂のような白い炎(疎)を噴出させるもので、その演出からどちらも地と関わりがあるということができるのではないだろうか。
― 出典 ―
- 『東方地霊殿 ~ Subterranean Animism.』 上海アリス幻樂団 2008
― 参考文献 ―
- 『日本民俗大辞典 上』 福田 アジオら編集 株式会社吉川弘文館 1999
- 『日本妖怪博物館』 株式会社新紀元社 Truth In Fantasy編集部・弦巻 由美子編 戸部 民夫・草野 巧著 株式会社新紀元社 1994
- 『<ものと人間の文化史 122-Ⅰ>もののけⅠ』 山内 昶著 財団法人法政大学出版局 2004
- 『日本民俗宗教事典』 佐々木 宏幹ら監修 三秀社 1998
- 『ジーニアス英和辞典 第3版』 小西 友七/南出 康世編集主幹 株式会社大修館書店 2003
- 『旺文社 シニア英和辞典〔新訂版〕』 小川 芳男編 株式会社旺文社 S.51新訂版発行
- 『全訳 漢辞林』 戸川 芳郎監修 佐藤 進・濱口 富士雄編 株式会社三省堂 2002