第2部第17話~18話の雑考

雑考1 初版: ’08 3/27

酒虫

どうも古代中国の物語(古典)を原典にしている模様。

その虫が腹の中に入ると、三月精のように酒の味が判らなったり、いくら酒を呑んでも酔わないと、師匠の診察通り。しかし、一方でその虫を酒の中に入れておくと一晩で美酒ができあがるという話もあるらしいので萃香の話は嘘ではない様子。鬼は嘘付かない。

但し、虫ごと飲めば味が判らなくなり酔わなくなるという事だろうと思われるので、もらった霊夢からすれば騙された、と思うかも。

三月精の霊夢は色々と鋭いので飲む前に気付いて萃香をどつきそうな気がそないでもないですが。

そして、その状態の治療法も師匠の言う通り、縛り付けて目の前に美味しそうな酒を用意し、腹の中の虫が我慢できずに外に出てくるのを待つ、といったもの。

余談ですが、芥川龍之介はその小説人生のうち前期(未詳)では中国の古典から着想を得た作品を書いて世に出していたようです。その為、中国の古典を小説化した作品も多く、その中に今回話題になっている『酒虫』も含まれています。

なお、にとりのテーマ曲で界隈に有名な『河童』は言わずと知れた晩期の作品。直接の関係は無いと思われますが一応東方Projectの中では芥川龍之介という単語で繋がるので話題に出してみました。

…本当、多方面にリンクを張っているのでZUN氏の着想と知識の深さには毎回驚かされるばかりです。

とりあえず、詳しい内容は図書館で書物を入手してから、でしょうか。

雑考2 初版: ’08 3/29

酒虫

これは中国の古典に登場する生物です。

その説話については虫の名前同様『酒虫』として語られます。以下にそのエピソードのあらすじを記して見たいと思います。

なお、参考資料は『芥川龍之介全集第一巻』「酒蟲」(芥川 龍之介著 株式会社岩波書店 S.29)に拠る。


舞台は中国の長山。

ここにいた劉 大成という金持ちが、物語の主人公。劉は大変な酒飲みで、朝から晩まで盃を手から離したことが殆ど無い。その上、一度酒を飲めば一人で甕一つ分の酒を飲み干すという、尋常ではない程の酒豪であった。と同時に、幾ら酒を飲んでも酔う事が無かった。

ある日、その劉の許に一人の坊主が訪ねて来た。その坊主は西域から来た僧侶で、最近何かと評判が高いという事であった。そこで、劉は怪訝に思いながらもその僧侶と会う事にした。

劉が「何用かな?」と尋ねると、僧侶は「酒が好きなのはあなたでしょうか?」と切り返してきた。話が見えない劉はとりあえずその通りだと返事をする。

すると、僧侶はそれを病であるといい、腹の中に酒虫という虫がおり、それが原因であると言った。それを聞いた劉は治るのかと尋ねた。かくして、劉の治療が始まった。

その治療法は聞いただけでは楽そうではあるが、かなり辛いものであった。それは、日向で寝ていろ、ただそれだけで良いというのである。

しかし実際には、動いてはいけないと体を縄で縛られ、その枕元に酒の入った甕が置かれた。しかも、その日は灼熱のような暑さで、炎天下の地面に横になったのである。

暫くすると汗も出なくなり、劉は目の前に酒があるというのに飲めない苦しさに打ちひしがれていた。その時、腹の奥から胸、喉と何かが這って上ってくる感覚がした。それを吐き出すと、口の中から出てきたソレは酒の中に入っていった。

縄を解かれ、皆で揃って甕の中を見てみると、そこには朱色の体で、長さが10cmほどの山椒魚のようなものが泳いでいた。この虫には、目も口もしっかりとあったという。

この酒虫を吐いた後、劉は一滴も酒が飲めなくなり、更には健康を損ね、加えて家まで傾いてしまったという。


というような話が語られています。

なお、酒虫が体内にいる際の症状は上の通りで、幾ら酒を飲んでも酔う事は無く、とんでもない酒豪になるというものです。

上の話では語られませんが、驚いた劉が僧侶に謝礼を送ろうとすると、僧侶は謝礼を受け取らず、酒虫のみを持っていったという話もあります。

その際の言葉に拠れば、酒虫は酒の精であって、一晩酒の中に入れておくだけでその酒が忽ちに美酒になるという事です。

…これらの話から、今回の三月精の話の中に現れる事象が説明できます。

萃香が渡した酒甕は酒虫が入っていた。これにより、一晩で美酒ができるという話になります。

それを奪った三月精が酒を飲むと、全く味がしない上に酔わない。これは酒虫が体内に入ったことによるいわゆる”症状”。これに対して永琳が述べている治療法は上述の劉のエピソードを指しているのでしょう。

なお、今回の話のサブタイトルの片方である”壺中の酒”とは永琳のスペルカード 天丸「壺中の天地」、薬符「壺中の大銀河」に掛けたネーミング、”酒虫の壺”は話中に登場する壺、という事で字面が似たものの対比になっていると思われます。

余談ですが、芥川龍之介が酒虫の話を記したという事については、特に関連は無さそうです。

– 出典 –

  • 『コンプエース 五月号』「東方三月精 Strange and Bright Nature Deity. / 第17話」 原作:ZUN 漫画:比良坂 真琴 一迅社発行 2008

– 参考文献 –

  • 『芥川龍之介全集第一巻』「酒蟲」 芥川 龍之介著 株式会社岩波書店 S.29
  • 他、原典である『聊斎志異』の「酒虫」を載せているサイト様

この記事を書いた人