人形「レミングスパレード」について

初版: ’09 8/28

『東方非想天則』において、アリス・マーガトロイドにも新たなスペルカードが追加された。そのうちの一つが、この人形「レミングスパレード」であった。スペルカード使用時コストは最大の5であり、全力を出すことはしないアリスにしては珍しいスペルカードではないかと考えられる。

そのスペルカードの名は勿論、無数の人形を使ったものであり、その為に”人形”と冠されていると思われている。あるいはそれだけではなく、群集心理的な要因を想定(理由は後述)して個々の意思が薄くなっている状態を、意思のない人形に例えるような意味合いもあるのかもしれない。

一方、名の「レミングスパレード」は”Lemmings Parade(レミング達の行進)”という意味合いであると考えられる。

ここでレミングについてさらに詳しく見てみたい。レミングとは、学術的にはげっ歯目ネズミ科Muridaeハタネズミ亜科Microtinaeに属するレミング類4属9種の総称であり、別名をタビネズミという。

ところで、この種(特に北欧地域に棲むノルウェーレミング)はある奇怪な行動によって知られる。それは、このレミングが大繁殖した時(3~4年周期で起こるという)に、集団となって湖や海へと大移動した果てに全滅するという、集団自殺ともいえるような行動である。

ただしレミングは泳ぎが上手で、水に入って全滅するというわけではない。俗説としてそういわれることが多い、ということである。ビュフォンは『一般と個別の博物誌』にてノルウェーレミングの集団移動の様子を詳述し、一般にいわれるように水に入って自殺するのではなく、仲間うちで殺しあった挙句に集団で果てるのではないか、という仮説を唱えたなど、
その行動については幾つか意見があるようである。

また、何故こうした行動を起こすのか、その原因は不明であるが、一説には生息地の周期的な気候の変化にともなう食糧の変化などが関係しているのではないかといわれている。

いずれにせよ、レミングはこうした集団自殺という特異な行動が知られている。スペルカード中の人形達も敵に向かって大挙し、自爆する。そこでスペルカードの名は、この様子を先のレミングの行動に見立てたネーミングであると考えられる。”人形”と冠されていることについて、群集心理的な要因もあるのではないかと先に述べたのはレミングの集団自殺のように皆同じ方針に向かって、個々の意思が曖昧な状態になっている様子をも”人形”の二文字は内包しているのではないか、と思ったためである。

さて、このレミングの行動を踏まえるならば、「レミングスパレード」のスペルカード名は”(レミングのような)集団自爆の行進”と意訳することができるかもしれない。


最後に余談ではあるが、『ヴァルキリープロファイル』(エニックス、1999)というゲームには、隠しモンスター的な存在としてハムスターがいる。このハムスターが使う業の中に「カモンレミング」というものがある。それは、技の発動と同時に大量のハムスター(レミングかもしれない。グラフィック的な差異は見られないが。なお、ハムスターはげっ歯目ネズミ科Muridaeキヌゲネズミ亜科Cricetinaeに含まれるハムスター類の総称とされる)が押し寄せ、最後に一匹だけ遅れてやってきたハムスターがトドメといわんばかりに最後の追加ダメージを与える、というものである。

レミングという名。また、最後にあらかさまな一体だけが遅れてきてトドメといわんばかりに追加のダメージを加える演出の類似が見られる。従って、人形「レミングスパレード」には、このカモンレミングの演出も加味されているのかもしれない。

― 出典 ―

  • 『東方非想天則 超弩級ギニョルの謎を追え』 上海アリス幻樂団/黄昏フロンティア 2009

― 参考文献 ―

  • 『世界大博物鑑 第5巻 [哺乳類]』 荒俣 宏著 株式会社平凡社 1988
  • 『学研生物図鑑 動物 ほ乳類・は虫類・両生類』 木間 三郎編 株式会社学習研究社 1990
  • 『ジーニアス英和辞典 第3版』 小西 友七/南出 康世編集主幹 株式会社大修館書店 2003

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