初版: ’11 11/20
三月精第3部第8話雑感の続きです。
『東方三月精 ~ Oriental Sacred Place.』第8話「イクチとナメクジ 後編」にて、魔理沙が語っていた江戸時代の書物…その正体と思われる本を発見したので報告を。
明暦~享保の加賀藩士・浅加久敬が著したという『四不語録』がそれです。私が確認したのは『随筆辞典 4奇談異聞編』(柴田 宵曲編、株式会社東京堂、S.36)p396-397にある「蛇と蛞蝓」の項ですが…それに拠れば、
能州のある禅寺で秋の夕暮れを眺めていると、垣根の辺りに蛇がとぐろを巻いていた。
その辺りにナメクジが輪を描いて蛇を囲った。一度輪を掛け終わったところ、蛇は全く動く様子は無い。
ナメクジは蛇に近寄り、蛇の体に登って縦横に行ったり来たらどこかへ行ってしまった。
という感じのあらすじで、その後…
往持立出て蛇のやうを見るに、尽く消して泡のみ残り居たり。
翌朝とく起出てみれば、その泡も消えてその跡より黄色なる菌数百生ひ出たり。
(この部分、上述の書物の該当箇所より引用)
と続きます。この部分、魔理沙が霊夢に話していた部分と類似している箇所が何箇所もあります。
この状態に多くのナメクジが集まり、キノコを食べていた。蛇を生で食べることはできないので、キノコにして食べた、という内容に続きます。さらに、
されば黄蕈(いくち)は蛇のなりたる間(まま)多きほどに、みだりに喰ふ事なかれ
と老人の諫められしもさる事や。
(この部分も上述の書物の該当箇所より引用)
と続きます。引用部最初の一文の内容は、魔理沙が引用した文章と完全に一致します。
去年の9月頭に、大正時代の『赤い鳥』を紹介しましたが、それよりもこちらの方が近い…というより、内容がほぼ一致しています。このことから、物語の中で魔理沙が読んだと言っていた書物は『四不語録』だと考えられます。
…ということで、このサイトでは『東方三月精 ~ Oriental Sacred Place.』第8話「イクチとナメクジ 後編」で魔理沙が引用した書物は『四不語録』ではないか、という結論でこの件についての調査を終了したいと思います。…長かった(汗)。
― 出典 ―
- 『コンプエース 四月号』「東方三月精 ~ Oriental Sacred Place. / 第8話」 原作:ZUN 漫画:比良坂 真琴 一迅社発行 2010
- 『東方三月精 ~ Oriental Sacred Place. (1)』(第8話 イクチとナメクジ後編) 比良坂 真琴/漫画 ZUN/原作 株式会社角川書店 2010
― 参考文献 ―
- 『随筆辞典 4奇談異聞編』 柴田 宵曲編 株式会社東京堂 S.36