厄野「禊川の堆積」
禊(みそぎ)は、行為者が自身の心身の罪や穢れを川や海の水で洗い清める所作のこと。
また、神事に従事する者が神事を行う前に行う場合もある。神話では、伊邪那岐命が黄泉国から戻ってきた後に、筑紫の日向の小戸の橘の檍原で行ったものが知られる。
平安時代以降になると、穢れを祓除する意味が強まり、密教などの垢離の観念とも習合した。
禊川(みそぎがわ)とは、上記の禊を行う川のこと。
ここでの「堆積」は、川との関連から河川における堆積を指したものと考えられる。
河川における堆積(堆積作用)とは、岩石の砕片や生物の遺骸などが、ある場所に蓄積することを意味する。
このことから本スペルカードは、禊川で行われた禊によって除去された穢れが、岩石などのように下流のどこかで堆積することをイメージしたものと思われる。
加えて、河川の堆積作用によって形成された平野のことを堆積平野と呼ぶが、本スペルカードに冠された「厄野」の”野”の文字は、禊川の穢れ(厄)が堆積して形成された平野(野)というイメージからであろうか。
一方、本スペルカードでの弾幕は画面の上下に青い針弾が出現していく。これを川を上から見た図とすると、川の両岸に溜まった穢れが具現しているのであろうか。それとも、画面を川の断面図と捉えるならば、川の底に堆積した穢れが無くなって(画面上部へ飛んでいく)もその直後には新たな穢れが堆積していく様子を表しているのであろうか。
なお、余談だが”やくの”と読む地名は文字こそ異なるものの存在し、京都府夜久野町の”夜久野”や、兵庫県山東町辺りで南北朝期から室町期にかけて見られた地名である”夜久野”、福岡県八幡西区辺りで平安期に見られた”夜久駅(やくのえき)”がそれに当たる。ただし、いずれも発音が重なるというだけで特に本スペルカードとの関連性があるわけではない。
― 出典 ―
- 『ダブルスポイラー ~ 東方文花帖』 上海アリス幻樂団製作 2010
- ※ 劇中のスペルカード、文・はたてのコメント など
― 参考文献 ―
- 『広辞苑 第六版』 新村 出著 岩波書店 2008
- 『平凡社 大百科事典 9』 下中 邦彦編集発行人 平凡社 1985
- 『平凡社 大百科事典 10』 下中 邦彦編集発行人 平凡社 1985
- 『平凡社 大百科事典 14』 下中 邦彦編集発行人 平凡社 1985
- 『角川日本地名大辞典 26 京都府 上巻』 「角川日本地名大辞典」編纂委員会・竹内 理三編者 株式会社 角川書店 S.57
- 『角川日本地名大辞典 28 兵庫県』 「角川日本地名大辞典」編纂委員会・竹内 理三編者 株式会社 角川書店 S.63
- 『角川日本地名大辞典 40 福岡県』 「角川日本地名大辞典」編纂委員会・竹内 理三編者 株式会社 角川書店 S.63
- 『Wikipedia(禊、堆積平野)』 http://ja.wikipedia.org/wiki/