ダブルスポイラー 八坂 神奈子 スペルカード

御柱「メテオリックオンバシラ」

  • meteoric
    • 流星の、流星のような、大気の

カタカナ部分を訳すと、”流星のような御柱”となろうか。

御柱は、諏訪大社(上社:本宮、前宮 下社:春宮、秋宮)の各宮において特に重要な場所(幣拝殿、神居、宝殿など)を囲うように四隅に建てられる大木であり、このことは既に周知のことであろう。

 
(前宮二之御柱/ ’10/4/3筆者撮影)     (上社御柱祭・木落し/ 同日筆者撮影)

一の御柱の長さは約17mほどで、以下二の御柱、三の御柱、四の御柱は順におおよそ16、15、14mとなっている。

その役割、意義については諸説挙げられており、神の依代である、あるいは神の降臨する場所を定める結界を示す、などと考えられている。

この御柱を建て替える神事が御柱祭(正式名称・式年遷宮御柱祭)である。

寅と申の6年ごと(7年目に一度、とも表現される)に行われ、各宮に四本建てることから、上社と下社では合計16本の大木を山奥から切り出し、定められたルートを通って、最終的には各宮の四隅の建てられる。

かつては正月寅・申の日(寅年は申の日、申年は寅の日)に大木を切り出し、3月寅・申の日に御旅寝(子)神へ大木を曳行し、4月寅・申の日に境内の四隅に御柱を建てたという。

現在は4月・5月初旬の土日祝日を中心として、御柱を山から曳き出す「山出し」、御柱屋敷から各宮まで曳行していく「里曳き」が行われる。

なお、上社と下社ではその行程の日時が異なるが、特に今年(2010年)の御柱祭を例に取ると、上社は4月2~4日、下社は4月9~11日に山出し、上社は5月2~4日、下社は5月8~10日に里曳きを行った。

なお、御柱祭に併せて行われる宝殿遷座祭は上社は6月15日、下社は5月7日に行った。

山出しでは特に、急な斜面を下る「木落し」、さらに上社では宮川の流れを渡る「川越し(川渡し)」が大きな見どころとして知られる。

『風神録』でのスペルカード、神祭「エクスパンデッド・オンバシラ」及び 奇祭「目処梃子乱舞」にて画面上部から落下してくる赤色のレーザーはこの木落しで坂を下る御柱を表していると思われる。

本スペルカードで落下してくる赤色のレーザーも同様に坂を下る御柱を表しているのであろう。

ここで meteoric という単語を絡めて考え、以下に幾つかの考えを示したい。

まずは、御柱祭では御柱となる大木が人間の力によって山坂を下るのであれば、

神である神奈子は天上から御柱を下らせよう、という神の超越性を表すための語ではないか、という考えである(『The Grimoire of Marisa』の天竜「雨の源泉」には魔理沙のコメントで人間の居る方は下だと言いたい、というような発言があったため)。

ところで、ヨーロッパやアメリカでは科学が進んだ近代でさえ隕石は地球の外から来る物質であるとは信じられておらず、大気中の現象であると考えられていた。

隕石を表す meteorite は元々、空(大気)からの石、というような意味であったし、こんにち気象学を表す英単語が meteorology であったりすること、また、本スペルカードに用いられている meteoric にも”大気の”という意味を持つことはこれに関連する。

ここで神奈子の能力は「乾(天空のことと考えられる:筆者注)を創造する程度の能力」であり、それが主として天候を操作する(風神として風を操り、天候を操作して思った通りの天候にする)ことを表しているならば、隕石(大気中の石)もその能力の範疇であったのかもしれない。

そこで、 meteoric の語をスペルカード名として冠したのであろうか。

また、神奈子は幻想郷に移動し、妖怪の山で妖怪の信仰を得ようとしていた。

『ダブルスポイラー』時点では『風神録』からしばらく経過しているので、妖怪の山である程度を信仰を得ているのではないかと考えられる。

妖怪の山には多くの天狗が住む。ここで、日本での最初の”天狗”という語の初出について見てみると『日本書紀』(舒明天皇9(637)年2月の条)での音を立てて落下する流星に対して用いられていた。

現在考えられる天狗の姿とは程遠いが、妖怪の山で天狗の信仰を得たことによって、神奈子の神徳に流星の要素が加わった、と考えることもできるのではないだろうか?

― 出典 ―

  • 『ダブルスポイラー ~ 東方文花帖』 上海アリス幻樂団製作 2010
  • ※ 劇中のスペルカード、文・はたてのコメント など

― 参考文献 ―

  • 『ジーニアス英和辞典 第3版』 小西 友七/南出 康世編集主幹 株式会社大修館書店 2003
  • 『日本民俗大辞典 上』 福田 アジオら編集 株式会社吉川弘文館 1999
  • 『日本まつりと年中行事事典』 倉林 正次編者 株式会社桜楓社 S.58
  • 『日本神祇由来事典』 川口 謙二編集 柏書房株式会社 1993
  • 『図説 日本未確認生物事典』 世間 良彦著 柏美術出版社 1994
  • 『平凡社 大百科事典 2』 下中 邦彦編集発行人 平凡社 1984
  • 『平凡社 大百科事典 3』 下中 邦彦編集発行人 平凡社 1984
  • 『気象科学事典』 日本気象学会編 東京書籍株式会社 1998
  • 『MARUZEN 宇宙・天文大辞典』 Sybil P.Parker編纂 小田 稔監訳 丸善株式会社 1987

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