秋 穣子補考 ― 神の占め ―

本考では、穣子は案山子、或いは案山子に宿ると考えられた素朴な農耕神(田の神)をモチーフとした存在ではないかと述べた。

本考で挙げたように、両者を繋ぐ接点は多い。今回は、その点についてさらに補考してみたいと思う。

そこで着目するのは、多数ある案山子の別名である。

現在、”案山子”という語は田畑に立つ一本足の人形を意味する。

しかし広義的に見れば、”案山子”とは農作物を食い荒らす鳥獣を退ける為の道具を指し、その形態は多岐に渡る。

例えば、日光を反射する円盤や、水車などの動力を用いて一定時間が経過すると音を発して鳥獣を追い払う仕掛けを施した”オドシ”、”オドロカシ”。

或いは悪臭を発するものを竿や枝に挟んで仕掛けるものなどがその一例である。

特に後者は、臭いを”嗅がせ”るもので、”カカシ”の語源にもなったことは本考でも述べた。

そういった種々の名の中に、”ソメ”或いは”シメ”という名を冠したものがある。

これはどうやら、所謂”案山子”を指す語の中で最も古くから存在していた語らしい。その形態は様々で、人形型から臭いを嗅がせるタイプまで広く包括する語だったという。

ところで、その意味するところは、柳田国男氏に拠れば田畑を”占め”る、即ち占有するという意味であったらしいと推察している。

なお、”注連縄”の”シメ”も同様の意味で、神が注連縄が張られたその一定の領域を占有することを表すもののようだ。

とすれば、注連縄を以って田畑を囲むという所作を始め、神の依代である人形を立てて田畑を守護して貰うという方法も、一種の”シメ”であると考えられる。

ところで、ここで穣子の放つ弾幕に注目して頂きたい。

彼女の放つ弾幕は、自身を中心として円形に展開するものが多い。第一、第二の通常弾幕を始め、秋符系のスペルカードも然り。

これは見方によっては、自身を中心とした一定の領域(=弾幕に囲まれた空間)を自身のフィールドであると示す所作であると考えられないだろうか。

穣子は豊穣の神である。

自身の領域と定めた範囲内に弾を撒くことで敵を追い払うのであれば、それは”シメ(神の占有)”という語の意味に通じる。

とすると、彼女の放つ弾幕もまた、自身の立ち回りを表す一つの要素だったのかもしれない。

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