初版: ’08 12/14
昨日、岩波書店発行の『日本書紀 上』を読んでいたら気になる記述を発見しました。
それは、崇神紀秋八月の葵卯の朔己の酉の条目で、倭迹即神淺茅原目妙姫、穂積臣の遠祖大水口宿禰、伊勢麻績君の三人が一様に大物主神の出現の夢を見たことを申し上げる場面にて、
昨夜夢之、有一貴人、誨曰、以大田々根子命、為祭大物主神之主、…(後略)
云々と述べているものです。このうち着目したいのは、”昨夜”の訓です。文中ではこれを”キズ”と訓じていました。
校註に拠れば、この語のうち”キ”は”キノフ(昨日)”の”キ”と同じであるといいます。
また、『万葉集』や『古事記』でも”許序(キゾ)”や”許存(コゾ)”といった語が見え、昨年や昨夜といった意味を持っていたようです。加えて、これらの語での”ゾ”は過ぎ去った夜、年を表すことからこの文中での訓は濁音だったと考えられること。また『日本書紀』での昨夜に対する古い訓に”キス”と当てられている場合があるが、これは音が転訛したもので、”キス”の清音よりも”キズ”という濁音と考えられる、ということで”キズ”の訓を当てることにした、というような旨の注釈がなされていました。
つまり、確定的な訓ではないようなのです。
このように不確定ですが、”昨夜”の文字に”キズ”という訓が当てられていることは興味深いと思われます。
何故ならば、咲夜という名前はその音から”昨夜”の語との関連が考えられますし、その当人は傷符「インスクライブレッドソウル」や傷魂「ソウルスカルプチュア」といった、”傷”という文字を含むスペルカードを行使する為です。
傷は一般に”キズ”と読みますし、これを肯定すると仮定したならば、咲夜 ― 昨夜 ― 傷と連想することができます。
…というのは深読みし過ぎでしょうか。ただ、面白い要素だとは思うので一応参考までに紹介させて頂きました。