ダブルスポイラー 封獣 ぬえ スペルカード

正体不明「紫鏡」

紫鏡とは都市伝説の一種。

「紫鏡」、「ムラサキカガミ」、「紫の鏡」などの言葉を二十歳まで覚えていると不幸になる、呪われる、死亡するなどといわれる。一方で「白い水晶玉」などのような特定の単語を覚えていると救われる、と繋がることもあるようだ。

覚えていてはいけない言葉は他にも存在あったり、都市伝説の中には他にも、「西条八十の「トミノの地獄」という詩作を決して音読してはならない」というような特定の言葉に対するタブーを伝えるものが存在するようである。

弾幕では、紫色のぬえの分身が出現し、これが”紫”。

その紫色の分身が本体と左右逆に動きながら弾幕をばら撒くところが”鏡”を表しているものと考えられる。

紫鏡については、具体的に”誰が”覚えていた人間を不幸にするのか、などということがあまり語られないようで、この主体が分からない辺りが”正体不明”ということであろうか。

― 出典 ―

  • 『ダブルスポイラー ~ 東方文花帖』 上海アリス幻樂団製作 2010
  • ※ 劇中のスペルカード、文・はたてのコメント など

― 参考文献 ―

  • 『日本人が意外と知らないにほんの話』 にほん再発見研究会編者 関 由香(やまのん)編集 モーヴ社編集協力 幻冬舎 2009
  • 『ダ・ヴィンチ No.158 June 2007』 芳原 世幸発行人 メディアファクトリー H.19

正体不明「赤マント青マント」

怪談・都市伝説の一つ。

赤マントは、学校のトイレなどの中で「赤いマントはいるか?」と尋ねるので、それに対して欲しいと答えると全身傷だらけになる、というもの。

これの対として青マントが設定されることもあり、そちらでは「赤いマントが良いか、青いマントが良いか?」という風に尋ねる。

これに対して赤いマントを選ぶと先程と同じ結果となり、青いマントを選ぶと全身の血を抜かれて真っ青になる、という。どちらにせよ回避の術は無い。

バリエーションとしてマントの他にチャンチャンコや半纏などを選ばせるものも存在するようだ。

弾幕は弾の色がそのまま赤と青であり、この話を表している。弾が途中でナイフに変わるのは、傷だらけにするイメージであろうか。また、弾が変化するという事象自体は選択の前後を表しているのかもしれない。

ちなみに、下記の正体不明「厠の花子さん」で記したが、トイレで現れる妖怪カイナデは「赤い紙やろか、白い紙やろか」という呪文を唱えると何もされないといい、出現場所や文句の内容から関連付けられることもある。

なお、撮影後の文のコメントにある赤マントは昭和10年代に流布した都市伝説・恐怖デマの一種の方。内容は、赤いマントを身につけた怪人が子供を拐かした後、殺害するというもの。

― 出典 ―

  • 『ダブルスポイラー ~ 東方文花帖』 上海アリス幻樂団製作 2010
  • ※ 劇中のスペルカード、文・はたてのコメント など

― 参考文献 ―

  • 『最強の都市伝説』 並木 伸一郎著 渡部 周編集 株式会社経済界 2007
  • 『図説 地図とあらすじで読む 日本の妖怪伝説』 志村 有弘著 青春出版社 2008
  • 『Wikipedia(「赤い紙、青い紙」、「赤マント」)』 http://ja.wikipedia.org/wiki/

正体不明「厠の花子さん」

厠(かわや)はトイレのことで、怪談のトイレの花子さんから。

学校にある特定のトイレ(奥から三番目のトイレ)に特定の方法(ドアを三回ノックするなど)をして呼びかける。すると、誰もいないにも関わらず返事が聞こえてくる、というのが基本のパターン。

一連の内容・背景となった物語などはバリエーションが豊富で、地域ごとなどで異なる。

とはいえ、花子さんの姿についてはおかっぱ頭で赤いスカートをはいた女の子、というイメージが一般的らしい。

その中に「手が便器から出てくる」というものがあり、弾幕の五本に分かれるレーザーはこれをモチーフとしたものだと考えられる。青い弾は便所という水に関連した場所から水を表すものか。あるいは人魂かもしれない。

ところで、花子さんのルーツについては一説に中国の厠の神である紫姑(しこ)神ではないかといわれる場合もある。

紫姑はある人の妾であったが、正妻に妬まれて正月十五日に便所の中で殺されたという。それを哀れんだ天帝が彼女を厠神としたのだとされる。

後世の女性達は正月十五日になると便所で(人形を作るなどして)紫姑神を祀って呼び出し、占いを行ったという。

この紫姑神は、嫉妬によって殺害されたことや殺害された場所から、花子さんのイメージとの共通点が生じたのではないかと考えられる。

さらに、便所はその空間や機能の性質上、昔は井戸や竈などのように異界に通じる特殊な空間と考えられていた。

それゆえ、怪談が作られやすかったのかもしれない。

ここで、他の便所の神について多少触れておく。

まず、神道では埴山毘売命・水波能売命の二柱がそうだとされる。これは神話での両神の生い立ちに由来していると考えられる。

次に、民間で信仰されている便所の神もいるが、厠神、雪隠神、閑所神、後架神など多くの呼び名を持つ。

祀り方としては、御札や、雪隠雛と呼ばれる小さな人形を神体として祀る一方、具体的な神体を祀らない場合も多いという。

神格としては箒神や山の神と共に出産に携わる神とされることが多く、昔話の「産神問答」では生まれた赤子の運命を決定する役目を担う。

先述の通り便所は異界に通じる空間と考えられていたことも、この神格を形成する一因になったのかもしれない。

なお、便所の神については暮れ六つに便所に入る時は、咳払いをして入らなければならない、などといい、不意に入ると何らかの祟りがあると伝える場所もある。

さて、仏教では烏枢沙摩(うすさま)明王が便所の神とされ、江戸時代の津村淙庵が記した『譚海』でも「雪隠の守護神也」と紹介されている。

一方で、便所は異界と通じる空間と考えられていたためか便所に出現する妖怪も存在する。

その一つが「カイナデ」で、節分の夜に便所に行くと尻を撫でられるという。

その姿形は不明だが、「赤い紙やろか、白い紙やろか」という呪文を唱えると何もされないという。

一説にはこれが「赤マント青マント」(同じくぬえのスペルカードになっていた)に発展していったとする説もある。

また、他の妖怪としては「がんばり入道」という妖怪もいる。こちらはホトトギスの声を厠にて聞くと災いがある、という俗信に拠るものだという。

江戸時代の鳥山石燕の『今昔画図続百鬼』では「加牟波理入道」として、足が無い幽霊のような姿で、口から鳥を吐く様子で描かれている。

その解説では大晦日の夜に便所で「がんばり入道郭公(ほととぎす)」と唱えるとこの妖怪を見なくてすむと伝える。

同様の妖怪は『甲子夜話』や『諺苑』でも記述があるが、『諺苑』では大晦日に便所で上記の文句を思い出すと不吉であると記すなど、正反対のことがいわれている。

ところで、なぜホトトギスと関連付けられたかというと、ホトトギスの漢字表記の一つである「郭公」が中国の便所の神である「郭登」に通じるから、という説があるらしい(ただし、中国の便所の神は先述の紫姑神の方が有名のようだが)。

このように、便所一つ取ってみても様々な神々や伝説があるようである(花子さんから脱線し過ぎ)。

― 出典 ―

  • 『ダブルスポイラー ~ 東方文花帖』 上海アリス幻樂団製作 2010
  • ※ 劇中のスペルカード、文・はたてのコメント など

― 参考文献 ―

  • 『最強の都市伝説』 並木 伸一郎著 渡部 周編集 株式会社経済界 2007
  • 『ダ・ヴィンチ No.158 June 2007』 芳原 世幸発行人 メディアファクトリー H.19
  • 『中国神話伝説辞典』 袁珂著 ・鈴木 博訳 株式会社大修館 1999
  • 『「道教」の大事典 道教の世界を読む』 坂出 祥伸責任編集 株式会社新人物往来社 H.6
  • 『道教と中国文化』 葛兆 光著 坂出 祥伸監訳 大形 徹/戸崎 哲彦/山本 敏雄訳 株式会社東方書店 1993
  • 『日本神祇由来事典』 川口 謙二編集 柏書房株式会社 1993
  • 『日本民俗大辞典 上』 福田 アジオら編集 株式会社吉川弘文館 1999
  • 『精選 日本民俗辞典』 福田 アジオら編集 株式会社吉川弘文館 2006
  • 『日本庶民生活史料集成 第八巻 見聞録』 谷川 健一編集委員会代表 株式会社三一書房 1969
  • 『江戸文学俗信辞典』 石川 一郎編 株式会社東京堂出版 H.1
  • 『図説 地図とあらすじで読む 日本の妖怪伝説』 志村 有弘著 青春出版社 2008
  • 『鳥山 石燕 画図百鬼夜行』 高田 衛監修 稲田 篤信/田中 直日編 株式会社国書刊行会 1992

「遊星よりの弾幕X」

  • 遊星
    • 惑星のこと。
    • アルファベットの24番目の文字。記号としては、変数や未知数を表し、より広く未知のものを表す記号としても用いられる。
  • 『遊星よりの物体X』
    • 1951年アメリカで製作されたSF映画の邦題。
      原題は The Thing (From Another World)。
      人類より知力・腕力に優れ、吸血して成長する怪物が円盤に乗って飛来。この怪物を巡って、人類のためにすぐ殲滅すべきと主張する軍人と貴重な研究資料として培養すべきと主張する科学者の対立へと発展する、というあらすじ。
      1982年にはリメイク版である『遊星からの物体X』が製作された。なお、この映画の原作はジョン・W・キャンベル・Jr著の『影が行く』。

本スペルカード名は上記の映画の邦題にちなむものであろう。

弾幕に見える赤色の○、青色の×、緑色の△、ピンクの□はそれぞれプレイステーションのコントローラのボタンを模したものと思われるが、これは遊星の漢字を一文字ずつ訳して、

    • play
    • star

として、プレイステーションとの音の類似から持ち出したものであろうか。

一方、Xは未知のものを表すことから、正体不明をウリとしているぬえとは未知(正体不明)という点で共通点が見出せる。

また、上記した映画作品は地球外よりやって来た生命体を題材として扱っていたが、ぬえもテーマ曲「平安のエイリアン」や、『星蓮船』における東風谷 早苗との会話など、地球外生命体(エイリアン)という点でも接点を持つ。

これらの点から、今作でぬえが本スペルカードを行使したのではないだろうか。

なお、本スペルカード中でぬえはしきりに左右に移動を繰り返すが、これは地球から見た他の惑星の動きを模したものではないかと考えられる。

― 出典 ―

  • 『ダブルスポイラー ~ 東方文花帖』 上海アリス幻樂団製作 2010
  • ※ 劇中のスペルカード、文・はたてのコメント など

― 参考文献 ―

  • 『広辞苑 第五版』 新村 出著 岩波書店 1998
  • 『学研 現代新国語辞典 改訂新版』 金田一 春彦著 株式会社学習研究社 1997
  • 『ランダムハウス大英和辞典 第2版』 小学館ランダムハウス英和大辞典第二版編集委員会編 小西 友七/安井 稔/國廣 哲彌/堀内 克明編集主幹 S. B.フレックスナー編集顧問 小学館 1994
  • 『イメージ・シンボル大事典』 アド・ド・フリース著 訳者代表・山下 圭一郎 大修館書店 1984
  • 『英語イメージ辞典』 赤祖父 哲二編 株式会社三省堂 1986
  • 『外国映画原作事典』 株式会社スティングレイ・日外アソシエーツ株式会社編 日外アソシエーツ株式会社 2008
  • 『映画大全集 増補改訂版』 株式会社AVエクスプレス企画・編集 株式会社メタモル出版 2003
  • 『Wikipedia(遊星よりの物体X)』 http://ja.wikipedia.org/wiki/

この記事を書いた人