2節 豊穣なる秋の神

今度は、穣子について見てみよう。

彼女もまた、”秋”の姓を持つ神であり、秋を司ることは姉と変わりは無い。

  • 秋符「オータムスカイ」
  • 秋符「秋の空と乙女の心」

Autumn Sky。それは秋の空。一方の上位スペルカード、秋符「秋の空と乙女の心」はことわざ”女心と秋の空”の 捩りであると考えられる。

そして、その意味するところはどちらも移ろい、変わりやすいものの例えである。

放たれる弾幕も、幾度と無くその軌道を変化させるのはまさに移ろいやすい秋の空のようである。このように、その姓の通り見事に”秋”を司っている様子が窺える。

“秋”という季節が司るものはそれだけではない。

『古事記』や『日本書紀』を始めとする神話の中には、「秋毘売神」という女神がいる。この秋毘売神の名はまさに”秋の姫”であり、系譜としては羽山戸神と大気都比売神の間の八柱の御子神のうちの一神である。

母神にあたる大気都比売神が食物の神であることからも窺えるように、
この秋毘売神の性格は稲作を司るものであり、秋という季節が名になったのは他でもない、秋という季節が稲の成熟の時期に当たる為であろう。

その”秋”の姓を持ち、かつ”穣”の字と共に「豊かさと豊穣の神」の二つ名を持つ穣子が司る秋の側面、それが豊穣である。


先にも述べた通り、秋といえば稲穂が収穫される季節であり、多くの木々は子孫を残す為に木の実を大地に落とす季節でもある。

まさに”稔りの秋”と謳われる様子そのものである。

帽子には葡萄をあしらい、エプロンには頭を垂れる稲穂が描かれているように、穣子の衣装にも豊かな稔りの秋が表されている。 それは無論、穣子が劇中で行使するスペルカードにも表れている。

豊符「オヲトシハーベスター」

オヲトシとは、『古事記』や『日本書紀』に登場する大年神を指している。一方でHarvesterとは刈り取り機や刈り取り人を表し、つまり収穫を意味する。

弾幕の赤い針弾が米などの穀物の実を表しているのであれば、黄色のレーザーはその茎葉か、或いは刈り取る為の道具の刃を表しているのであろう。

さて、大年神は素盞鳴尊の御子神であり、民間の信仰では年が改まった際に家々を訪れて年を与える年神、或いは歳徳神といった神と習合している。

玄関先に飾る正月飾りや門松は元来、この神を迎える為の依代であったと考えられており、年神は現代の我々の間でも非常に馴染みのある神でもある。

同時に、大年神の”トシ”は祈年祭の”年”のように米、穀物の稔りを意味する。その為大年神は穀物の豊穣を祈念する神であり、その性格は豊穣を司る穣子と一致する。

また、穀物の豊穣を司る神は大年神だけではない。

穣子のテーマ曲「稲田姫様に叱られるから」に現れる稲田姫こと櫛名田姫命もまた、五穀豊穣を司る神である。

櫛名田姫命は、素盞鳴尊の八岐大蛇退治の物語で、八岐大蛇に食べられそうになっていた所を素盞鳴尊に救われ、素盞鳴尊の妃となった女神である。

このように、大年神や櫛名田姫命といった五穀豊穣を司る神々の名からも、穣子の豊穣を司るという性格を窺い知る事ができるのだ。

この記事を書いた人