天手力男命(あめのたぢからおのみこと)。さて、この名前。東方萃夢想をプレイした方なら判るかと思います。
萃鬼「天手力男投げ」
萃香の岩を萃めて投げるあの豪快なスペルカードの弐符バージョンの元ネタである神様なのです。
天手力男命は記紀神話のうち、有名な「天之岩戸(あめのいわと)」の物語で活躍します。やはりこちらも符の壱「投擲の岩戸」の元ネタです。
…何というか、判りやすいですね。
さて、その伝承を軽く要約すると、大体以下のような感じになります。
天照大御神は、高天原に上ってきた素盞鳴尊を高天原に侵攻しに来たのだと疑いました。素盞鳴尊は、自分は潔白で、ただ姉である天照大御神に会いに来ただけだと主張しました。そこで、天照大御神は素盞鳴尊が潔白であるかどうか、誓約(うけひ)で決着をつけることにしました。
この誓約によって一時天照大御神と素盞鳴尊は和解をしたようですが、その後素盞鳴尊は狼藉の限りを尽くします。天照大御神も弟である素盞鳴尊を弁護してたのですが、ある時…神聖な機屋(はたや)に皮を剥いだ馬を投げ入れ、その時に機織をしていた女性の死を招いてしまいます。
これを嘆いた天照大御神は、天之岩戸という岩の裏側に隠れてしまうのです。さらに、太陽神である天照大御神が岩戸に隠れてしまった事で、高天原は真っ暗になり災厄が蔓延ってしまいました。
これを見かねた神々は打開策を考えます。そこで、八意思兼神の一計により、諸々の神々が神具・祭具を作り、(鏡や玉、幣など。八咫鏡・八尺瓊曲玉(やさかにのまがだま)もこの時に作られたといいます)天之岩戸の前で祭り騒ぎを始めます。途中、天鈿女命が激しい踊りを披露したり。
その騒ぎが天照大御神の耳にも入り、何事かと戸を少し開けて覗き込みます。そこに、鏡を見せてびっくりさせ、その隙に。天手力男命が天照大御神を掴み、天之岩戸の外へと引っ張り出したといいます。
と、天手力男命は最後に天照大御神を外へ再び連れ戻すという大任をこなした神様です。一方、長野の戸隠神社では、天手力男命は天之岩戸そのものを投げ、それが現在の戸隠山になったと伝えているようです。
萃香が岩を投げるというエフェクトはこれに由来するのでしょう(最も、最初に相手の懐へ飛び込み掴みかかっているので、天照大御神を引っ張ったという方の話とミックスした、とも考えられます)。
なお、戸隠山の名称からお判りの通り、萃符「戸隠山投げ」もここから導き出せます。